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とてもじゃないが表に置けない痛さ炸裂の雑文をどうにか供養するために設けた墓場のような場所。
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最期を迎えて消え行く彼女に
同行することを決めた

醜い自分の醜いものを、全部閉じ込めてしまったら
最後に残るものなんて何もないだろう

闇に呑まれて落ちていくこの身体を
留める手段も、理由もない

(――左甫くん)

それでも
この世界に破片のような何かが残ったとしたら

きっとそれは
君への想いだろう

これは、これだけは

どんなに僕自身が
汚れていたとしても

美しかったと、言えるから。

そう、
守らなきゃ、じゃなくて、

僕は守りたかったんだ

うつむき流したあの涙を、
もうこれ以上流させたくない
不安に駆られて泣き叫ぶ君を
もうこれ以上傷つけたくない

それが僕の責任でも、
そうじゃなくても
僕はきっとそう思った

そう、守らなきゃ、じゃなくて、

僕は君を――ただ守りたかっただけなんだ。


どこまでも自分勝手に
君に関わってしまった
君の視界に、心にまで
入り込んでしまった

あの日見つけた君の姿を
どうすればなかったことに出来るのだろう

どうしようもないくらい
後悔しているはずなのに

僕の中に今残り続けるのは

どうしようもないくらい君ばかりで

君を消せない自分が
そういう自分が
本当に最低で
だから
僕が消えなくちゃと思っているのに。

消え行く彼女と自分の存在
身体の感覚も薄れていく中
君のことを僕は最後の最後まで
手放すことは出来なかったみたいだ。

――だからせめて、もう見つかることのないように。

僕という存在が消え失せたあとの世界に
残った小さな破片みたいなこの感情が

――もう二度と、君を見つけてしまわぬように。

ただ、祈って目を閉じた。

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テレビの話題で盛り上がる二人が、何故か。




福田ねこと宅間裕一。
互いに「人間」の友達ができたとはしゃいでいる。
テレビ、ラジオ、歌手、タレント、アニメ、漫画・・・・・・飛び交う単語は現代日本の高校生の話題に相応しいモノばかりなのだが、この学校内でそれを理解できる者は一握りしかいないだろう。
それに、この教室には絶対にいない。
自分以外は。

「こういう話ができるっていいね!」

笑顔で語りあう二人を見て、自分は安堵、しているはずだ。
彼女――福田さんにとっては、自分が切り離してしまった人間界のことだから。
こうして少しでも楽しんでくれれば嬉しい。

帰りに喫茶店へ寄り道したり、休日に友達と買い物したり、好きな音楽を聞いたり――今みたいに、男の子とテレビの話題で盛り上がったり。

そんな高校生の当たり前がここでは何ひとつ出来ないから。
これでよかったんだ。
彼女が少しでも、彼のおかげで楽しんでくれるなら。

自分がいなければ、あんなことを思わなければ、
今ごろ当たり前にできていたんだ。

これが、本来の彼女の姿。

――だけど。

笑い合う二人を見ると、胸がざわつくのはどうしてだろう。
自分の知らない所で、彼女が普通の高校生をしている姿を想像すると。
自分の手の届かない場所で、知らない誰かと楽しげに笑っている姿を想像すると。

こんなにも、たまらなくなるのは。
こんな、こんな感情は要らない。
この感情の名前を、僕は知らない。

この期に及んで
一緒の学校の敷地内に居ることを、
同じ教室で机を並べていることを、
噛みしめている自分は、なんて浅ましいのだろう。

宅間裕一のいる場所に
自分がいたらと考えている自分が

君と話してみたいだなんて
思ってしまうこんな自分が

ああ、本当に

大嫌いだ。

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暗闇に渦巻きが見える。
彼女がこちらを見ているのだ。

あの人の側でぼんやりとしていると、その時々の記憶がふっと目の前に現れることがある。

足もとに寄り添う黒猫の九朗。
シルビノとの会話になっていない会話。
いらついた表情の右甫。
朝話しかけてきた荒木狐タ郎。
机の上で寝ている鈴原みぃ子。
キツネ姿の宅間裕一。
美術室のすみにいる鎌場梅花。

なんでもない日常だったり、誰かを傷つけた事件だったり。

でも大丈夫。
僕が願えば、みんな閉じ込めてくれるから。
辛い記憶も、苦しみの原因も、すべて残らず闇の中へ。






「・・・・・・福田さん」
ふと気がつくと目の前に、彼女がいた。

ああ、そういえば。
今日の部活の帰り、偶然一緒になったからだ。

「どこか調子悪いの?」
西の空が真っ赤だったから、次の絵には暖色を使ってみようか。
そんなことをぼぅっと考えて、反応が遅れただけなのだけれど。
「大丈夫?」
心配そうに声をかけてくれた。
なんでもない、と言うと、そっか、と笑った。
「じゃあまた明日」
手を振って歩いて行く。
あのとき、赤い夕陽をはじいた髪が、キャラメルみたいな甘い色をしていて、綺麗だなぁと思った。


「…福田さん」
「?」

渦巻く暗闇の中、一人夕陽色した彼女を 呼びとめてみる。 

「……福田さん」
「なあに?」
 
名を呼べば、答えてくれる。
手を伸ばしても、逃げない。
そのまま髪に触れそうになって、はっと我に返る。
 
「……ごめん」
「どうかしたの?」
 
伸ばした手を、そっと握り返してくれる。
「左甫くん」と名前を呼んでくれる。
笑顔を向けてくれる。
 
――忘れるな。
――これは、自分の記憶が作り出した、ただの幻。

彼女は優しい。
でもそれは、何も知らないから。
彼女は優しい。
でもそれは、都合のいいニセモノだから。
 
もし福田さんが本当のことを知ったら、自分のことを憎むに決まっている。
 もし福田さんがホンモノならば、こんなに近くで触れたりできない。
それは当たり前過ぎるくらい当たり前のこと。

「ごめん・・・・・・」
「いいよ」
それでも優しく微笑むのは、ああ、幻だからだ。

暑いのも、寒いのも、痛いのも――苦しいモノは全部閉じ込めてしまったはずのに、彼女の幻は目にしみるほど暖かくて、胸の奥がちりりと痛んだ。

駄目だ。
こんなもの、あっちゃいけない。
こんなニセモノ、存在しちゃいけない。
こんな感情――全て、全て閉じ込めなくては。

『本物』の彼女を思うたび、早く捨てなくちゃいけないと思うのに。

――・・・コレ、トジコメル?

あの人が、言う。

「もう少し・・・待って」
 
もう少し。
もう少しだけ。
 
幻でも、暖かい。
こんな夕陽の色した彼女。
暗闇に押し込むなんてできない。
許されるはずがない。
 
「全て終わったら、僕が消えればいい」

次第に色を失う黄昏時に、溶けてしまうのは自分だけでいい。

あの時僕が奪った未来を、きっと返してみせるから。
この身体も、この感情も、僕が全て闇の底へと持っていくから。
君だけは必ず、陽の当たる暖かい場所へと、帰してあげるから。

明日なんて来なくていい。
朝日なんてもう望まない。
だからせめて、
今日の夕陽はこのカンバスに、ま白な世界に閉じ込めさせて。


 

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