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とてもじゃないが表に置けない痛さ炸裂の雑文をどうにか供養するために設けた墓場のような場所。
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「お前いつか坊主はイヤだって言ってたけど、
南蛮人だって僧侶は坊主じゃないか。
それに目はともかく髪なんて剃っちまえば
鬼とか言われることも減るんじゃないか?」
「・・・それは」

そう、髪は染めれば黒くなる。剃ればわからない。

わかっているが、それはできなかった。
まるで本来の自分が『間違って』いるようで。

他人の否定と、自分の否定。

どちらがいいかを選んだら、
自分は相手を恨めばいい。

「・・・ミス・ゴールドは鬼と呼びはしたけれど、少なくとも否定しなかった」

あのとき「キレイ」と言われたこと。
ビードロより金米糖より、月あかりに透かした自分の髪が。

珍しいからとか油断させるためとか、理由はあったかもしれない。

でも、あのふと漏らしたような言葉に嘘はないと信じたい。


「社交辞令でもお世辞でも・・・それを聞いて、
言ってくれて嬉しかったことに変わりはないんです」

――ありがとう。

少し素直になった今なら、面と向かってそんなことも言えただろう。
日本語も随分上手くなったことだし。

「ま、今更言っても遅いけどなー」
「・・・わかってますよ。それを言ったらあなたこそ」
「いいんだよ。あいつは『友達』なんだから」
「私だって『友達』として助けてもらいましたよ。あなたから」
「・・・やっぱり剃らせてもらおうかその金髪」
「冒頭の発言は流れをそこに持ってくるためだったんですね」
「いいじゃないか。『友達の友達は友達』っていうし!」
「とりあえず近づいたら撃ち抜きますよ?」
「・・・・・・この銃刀法違反め」
「廃刀令も出てないご時世にナンセンスな」

気軽にぶっ放すことはしなくなったけど、やはり捨てないこの凶器。
・・・多少、感傷的な理由もあるけれど。


「お前さー、結局どう思ってたんだよあいつのこと」
「・・・今さら聞きますかそれを」

日本語は都合がいい。
 

――「嫌い」じゃありませんでしたよ?



声も顔も定かではなくなった少女へ向けた言葉は、
その場に漂うだけで、やがて静かに消えた。

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「・・・・・・」
「・・・泣いてるんでスカ?」

仕返しにきた相手が泣いていた。

誰だか知らないが、先を越された気がして面白くない。

 ならば追い撃ちをかけて痛め付けてやろうか。



「・・・・・・」
「・・・・・・」

憎むべき相手が泣いている。

理由なんてどうでもいいけど、なぜか自分も気分が悪い。

むしろ喜ばしいはずなのに。


 
「・・・・・・」
「・・・・・・泣かないで、くだサイ」
 
目的とは正反対の言動。

本来なら銃を突き付けているはずの右手にハンカチ。
 


「・・・まったく」

その涙、渇いたらまた泣かしてやる。
しゃっくりが止まったら撃ち殺してくれよう。

だから――それまでここで、待っててやろう。



 慰めたいわけでは決してない。
あなたを泣かしていいのは、私だけ。

だから早く、泣きやんで。

――・・・一時、休戦。





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置いてかなイデ。
逃げなイデ。

人ならざるもの?
違う。なのに。
視線が――痛イ。

はっ――
「・・・・・・これはまた一度どこかで見たようなオープニングデスネ・・・」(其の九参照)

これは昔の夢。嫌な夢。

昔のことなど忘れてしまえばいいノニ。
もはや意味をなさない言葉たち。
未だ縛られているなんて。

そうだ。
「・・・久しぶりに伊賀にでも行きまショウカ」

よくわからない動機はそのままに、へらっと笑う少女を思い浮かべる。
今度はどうしてくれようか、あれこれ思案をめぐらせる。

先ほどの眉間のシワはどこへやら。

不思議に弾む心には無自覚のまま、今日も少年の一日が始まる。

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「服部殿」
「・・・これはこれは。甲賀忍の里長直々の来訪とは珍しい」
「先日『伊賀ずきん』が出ていったとか」
「お聞きになられたか」
「ええ、うちの子たちから。ずいぶん厳しくされたようですな」
「・・・最初からこうなるとわかっておった。あやつは忍には向かぬ」
「あなたにはやはり敵いませんな」
「ほう?」
「私もできることなら、あの子たちを日の光の下で育ててやりたかった」
「・・・植物全てが陽光を欲するとは限らないであろう」
「わかっています。これがあの子たちの望みなのだと」

――俺は名前に添って、出雲守様を支えられるようになります。
――お師匠様、私は誰より強くなりたいんです。だからここにいさせて下さい。

「私にできることは、せめて心を失くさぬようにと務めてやることだけ」
「甲賀と伊賀の違いはそこにある。そしてそれでよい」

――心を持ち、腕の中に守るか。
――心を捨て、穢れを避けるか。

里長が選んだ術は異なれど
根を成す想いに差異はない

「あの子たちがいつかたどり着く『答え』が、あの子たちにとっての最善であればよいのですが。
 願わくば・・・彼女と同じように」

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黒い頭巾の伊賀ずきん。
本日は近くの滝に打たれ、精神を鍛える修業。
気合い充分、朝一番に出掛けて行ったはいいのだが・・・

「遅い・・・!何をしとるんだあの駄目乙女が・・・」

空はすっかり茜色。
時刻は酉の刻を回っているが、一向に帰ってくる気配はない。

「まったく・・・何処で油を売ってるのでしょうか」
「仕方ない、零蔵。少し見て参れ」
「わかりました」

修業に使ったはずの滝壺には姿はなく。
里から通ったはずの道にも何の痕跡もない。

「どこかで脇道に逸れたな・・・」

滝行を終えて、帰る途中に花畑でも見つけて別の道に逸れたか?
それかまたいざこざに巻き込まれたか・・・少女の行動を予想してみる。

まず浮かぶのは、細い眼をした盗賊が絡んだ諸々。
次に、何かしら顔を出す甲賀忍の二人組。
ついでに、なんか小さい南蛮忍者と歩き巫女。
または、未知の生命体と遭遇。
もしや、狐狸妖怪に化かされた、とか。
まさか、人さらいに拉致監禁に身代金要求?
それはあるまい。根拠はないが。

泡のように際限なく浮かんでは消える可能性。
(…何かしらトラブルを呼ぶ体質だからな)
そこまでで思考を停止し
(どれでもいいか)
とひとつため息。



かくして捜索は始まり――

「・・・温い」

数分で終了した。



ころんと寝ころぶ一匹の子猫。
ふとそんな単語が浮かんだ。

何をしているかと思えば、花畑ですやすや居眠りか。
――狼がきたらどうする気だ。

「おいこら、ばかずきん」
「あてっ・・・は、零蔵様!?」
「修業はどうした」
「あ、あの、つい気持ちよくてうとうとと・・・」
「帰ったら父上のお叱りを受けるんだな」
「ええええ!?」
「大層ご立腹だったぞ」
「・・・・・・・・う」
「せいぜい反省するんだな」
「うわああああどうしよう…ってなんでそんなに嬉しそうなんですか!!?」

慌てる様子がなんだかおかしい。
先ほどまで眉根を寄せていた自分も同じくらい滑稽だが。

「・・・置いてくぞ」
待ってくださいっ!と追い掛けてくる小さな人影と、夕暮れ色に染まった花畑。

「牙を生やした獣もいるのに、のんきなもんだ」
「え、また熊でも出たんですか?」
「…また?」

それはよくわからないが、何故かひどく安堵している自分がいた。

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