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とてもじゃないが表に置けない痛さ炸裂の雑文をどうにか供養するために設けた墓場のような場所。
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初めて自分が欲しいと思ったもの。
初めて自分で手離したもの。

たまに会えればいいと思っていた。
仲間としてそばにいればと思っていた。
彼女自身に汚れて欲しいわけじゃない。
たとえ血を流し、略奪をするのがこの身でも
帰った場所に、あの笑顔があれば。
ただ隣にいさえすれば。

それでいいと思っていた。

――なのに。

手を離そう。誰より早く。
一緒に堕ちて欲しいだなんて
思ってしまう、その前に。

あの日あの時、握られた手を握り返していたら
彼女は今も俺の側にいたかもしれない。

名前を呼ばれ、呼んでと言われ、結局俺は何も言わなかった。
手を握られ、手を離され、結局俺は何もしなかった。

悪人だろうが盗人だろうが、「友達」と笑顔を向けてくれる心につけこんで、
さらってしまうことは容易かっただろうけれど。

そんなあいつだからこそ、俺は。


長く寄り添い共に歩むにつれて生まれてしまう親愛の類は
いつかきっと、奇麗なあいつを俺のいる暗闇へ駆り立ててしまうだろうから。

俺と一緒にいるという、ただそれだけの
そんなくだらない理由で、一緒に堕ちてくれることは分かっているから。

手を離した。誰より早く。
一緒に堕ちてあげるだなんて
言われてしまう、その前に。


ただ黙って見送った背中。

何も言えなかったのか、言わなかったのか。
何もできなかったのか、しなかったのか。

どちらでもいい、答えはいつも
空っぽのこの手のひらの中に行きつく。

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私は、彼の碧い眼がやっぱり少し怖かった。
私とはまるで違った世界が見えそうだから。

もし私の黒い目と交換できたら、きっと青みがかったガラスを
通したように見えるに違いない。
まるで海の中にいるような気分になるだろう。
 
そう言ったら、彼は不機嫌そうに言った。
私の世界が青みがかっているのではない。
あなたの世界が本来より黒ずんでいるのだ。
証拠に、砂浜がこんなにまぶしいのに、あなたは目を開けていられるではないか、と。
 
二人で、海に来ていた。
泳ぐわけでもない、春先の海。
晴天とはいえ、そんなにまぶしくあるはずもない。
 
だが、彼は日陰からあまり出てこない。眩しいからと彼は言う。
日差しを感じると彼は言う。そういえば、白人は色素が薄いから、
有色人種より太陽の刺激に敏感だという話を聞いたことがある。
 
自分に平気なことが、彼には平気じゃないようだ。
 
「だったら山にすればよかったですね。」
 
楽しめないでしょう、と聞けばすっと目をそらしただけで反論はしなかった。
 
「でも最初から海に行くと言ったんですから、
 その時断るなりしてくれればよかったのに」
「珍しく、誘われたノデ」
「断れなかったんですね」
自分に気を遣ったのだろうか。それはとても意外なことだった。
よく勝手なことを言って不機嫌になって時々暴れて困らせていたのに。
単にワガママを言っているわけじゃないことは分かっているけど。
 
「こういう時こそ、いつもみたいに言いたいこと言ってもいいんですよ?
 さすがに怒りませんよ?」
「違いマス。海自体は嫌いじゃないカラ」
 
時代錯誤が許されるならサングラスでもかければいいし、と真顔で。
今はやめておいてもらおう。
 
ザパン、と波が寄せる。
他に人はいない。
二人だけの春の海。
 
「海が好きなんですね」
「好き、というより、日本に初めて来た時の感じの、昔のこと、デス」
「懐かしいんですか?」
「なつか、シイ?」
「昔のこと。楽しかったこと。苦労したこと。悲しかった、辛かった、嫌だった、
 でも今なら穏やかに許せる、笑えること。そういうのを思い出してしまう
 時の気持ちです」
「なら、多分そうデス。海は、懐かしい、デス。」
 
命の源、母なる海――そういう意味以上に海は彼の故郷だという。
私にとって異国、彼にとっての祖国。
その土を踏んでいた時より、
海の上にいた時間の方が印象深く根づいているのだと。
幼いころ、まだ見ぬ日本に思いを馳せて過ごした場所。
生死をかけた船旅は過酷で、でも期待に満ちていて、
まだ何も嫌わず憎まずいられた時間。

碧い眼にこの陸地はどれだけまぶしく見えたのだろう。
 
「懐かしい、デスカ。じゃあきっと、あなたもいずれ『懐かしい』
 になるんでしょウネ。私ノ。」
「そう思ってくれますか」
「きっと、多分。そうなる可能性は少なくない、デス。」
「本当に日本語上手ですね、レオさんは」
遠回しな言い方が、逆に直接的な物言いに感じて笑ってしまった。
「苦労したでしょう。」
「字は嫌いでシタ。数が多すぎマス。」
「頑張って書いてくれたじゃないですか、果たし状。」
「あなたに間違ってる部分を朱で添削して送り返されて以来、
 意地でも英語で通すことに決めましたケド」
「上達のためよかれと思ったんですが。」
「好意ならなおさら嫌がらせでスヨ。」
「そうですね。」
 
この人は傷つきやすいのだ、と理解はしているものの何に傷つくのかが
イマイチ分からないから、今みたいになんだかよく分からない
関係になってしまった。
 
「なんなんでしょうか?」
「友達、デスヨ。」
「友達、ですか。」
「あなたがそう言ったんデス。」
「そうでしたか?」
「だから、友達デス」
「はい、絶交しない限りは友達ですね。」
「ゼッコウ?」
「交わりを絶つ、話したり、会ったりしなくなることです。」
「……。」
「あ、でも今すぐ出来たりもしますよ。」
「?」
「こうやります。手を出してみてください。」
「ハイ」
「適当に右手が私、左手がレオさんとしましょう。今人差し指で繋がってますね。
 それをこう、上から手刀で切ります」
 
シュッ
 
「これをやると、絶交したことになります。正確には、その意思表示に。
 ちなみに、繋げる時は下から同じように」
 
シュッ
 
「はい、仲直り、です」
「簡単ですネ。」
「まあ、小学生がケンカしたらやるようなお遊びですよ。」
「時代、時代。」
「寺子屋で。」
「惜しいけど微妙に違ウ。まあいいデス。分かりましたカラ。」
 
 
「――で、レオさんなんでまだ指くっつけてんですか?」
「今繋げたじゃないでスカ。」
「終わったらいいんですよ。ただの確認ですから。」
「そうでスカ?」
言うとストン、と腕を下ろした。
だが、手はまだ一を数える形。
 
「意識して繋げないと、繋がらないんでスネ。」
「はい?」
「こうして自然にしていたら、右手も左手も絶対繋がらないカラ、
 わざわざ切らなくてもいいようナ?」
「確かに、会わないことや話さないことも文字通りだと絶交になりますけど。」
「私文字分かりまセンし」
「漢字ならなおさらそうでしょうね」
「……分かりまセンし。」

伸びたままの白い指の意図を量りかねて顔をのぞくと、
伏せたまつげで碧い眼が隠される。
(その長さが少し憎らしい)

「――分かりまセン。
左様なら、絶交、なんて、言われたって、私には分かりまセン。
つまり、会わなければ友達じゃない、と。
話すことがなくなれば友達じゃない、と。
左様なら、別れましょうなんて。
語源も知らない、分からナイ。
離れてしまえば、絶交と同じ。
もう友達じゃなくなる、ということデスネ。」
 
「・・・・・・・・・ああ、なるほど。」
 
分からない上に分かりにくい彼の
分かりやすい言い分が、分かった。

そっと黒衣の袖をつかんで、もう一度、彼の指を繋げてみる。
 
「友達ですよ。
 こうして目で確認した繋がりを、あえて絶たない限りは、友達です。
 本当は目に見えるものじゃないんですから。」
「・・・・・・」
「納得しました?」
「いえ全然」
「そうですか。じゃあ――」
じゃあいっそ切りましょうか、忍者漫画らしく刃物も携帯してますよ、
なんて言ったら怒るだろうと思ってやめたけれど。
「今切って欲しいデス。自然に切れるくらいなら。」
「そ、そうですか?意外と積極的ですね、いや、この場合消極的?」

「――しっかり切ればいいんデス。再び繋げられるなら。」

一瞬きらめいた色つきの眼差しが、まっすぐ過ぎて射すくめられる。
(ああ、やはりまつげは長い方がいい)

「糸が古びて、自然にほつれてちぎれたら、痛みはなくても、
 繋げることもきっと出来なくなりマス。」
「そう、でしょうか?」
「私はそうなんデス。」
「再び繋げたいと?」
「……そうは言ってまセン。」
「ふふっ――なら、切っておきましょうか。」
 
シュッ
 
「絶交、デス。」
「絶交、ですね。」
 
初めて、彼の笑った顔を見た気がした。
初めて、彼に笑いかけた気がした。

結局海に誘った意味はよく分からないまま、私はもうすぐ旅に出る。
糸の切り口が劣化しない保証なんてないけれど、再び会うことがあったら、
変に律儀な彼はまたこの手遊びに付き合ってくれるだろうか。



「やっぱり、碧いなぁ。」


春がすみに、揺れて消える波と光と、もう二つ。
彼の世界は、彼の眼は、これすらきらきらとまぶしくて思わず
視界を覆ってしまうほど輝きに満ちている。
自分もそれに含まれるのだろうか。

それは少しうらやましくて、
やっぱり少しだけ、怖い気がした。

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言葉が届かないことは救いだ
分かってもらえない明確な理由があるなら
そんなに傷つかずに済むから
 
レオさんは、色んなものを他人のせいにできますね。

国が違うから
文化が違うから
言葉が違うから
 
気持ちを伝える怖さは皆同じなのに
伝えて生じる痛みも同じなのに

レオさんには逃げ場があって
もっともらしい理由があって
憎む相手がいるじゃないですか
それって少しうらやましいです

嫌われたくはない、のだと
これで伝わっただろうか
きっと伝わらないでしょうね
だからこそ、こんな言い方するんですよ

いっそあなたが
もっと遠ければよかった。
繋がる術などないほどに。

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※レオにドビンちゃんの名前がばれましたーみたいな。
この二人の接点とか深く考えたら負けです。









私の名前を変だと思わないのかと聞いたら、
眼の前の男は真顔でどこが変なのか説明しろと言ってきた。
説明なんて必要ないだろう。「ドビン」なんて、誰が聞いても普通ではないではないか。
そう言ってみても、眼の前の男は納得しない。
それどころか、不機嫌そうな険しい顔になる始末。
何かがおかしい。本来なら不機嫌になる権利はこちらにあるのに。
 
黙っていても人ならざるもののように見えるというのに、深く眉をよせてにらみつけてくる。
これぞまさに鬼の形相と言うのだろうか。
 
「だから、ドビンは土瓶で、お茶を飲むときお湯と茶葉を入れて使うものですわ!」
なぜ知られたくなかった名前を勝手に暴露された挙句、その珍妙さを自らの口で明確にしなくてはならないのか。
いや、口だけではない。この手はそこらの木の枝でご丁寧にカタカナと漢字を書いて説明している。
その隣には簡単な絵までつけてしまっていた。
 
「…ああ、あれデスカ」
 
持ちうる手段の限りを尽くし、自分の名がいかにおかしいか相手に納得させることに成功したようだ。
バカらしいことこの上ない。
 
「ようやくわかっていただけたようで…」
「余計にわかりまセン、Ms.Dobbin, あなたの名前のどこがおかしいというのデスカ」
「はぁ?」
「Dobbinというのは確かにファミリーネームですけれど、れっきとした名前ではないですカ」
「?」
「それに茶道具のひとつなのでショウ?和風で別にいいじゃないでスカ」
 
……?
この男の思考回路が読めない。
変じゃない?おかしくない?和風だ?
見たところお世辞でもなんでもなさそうだ。
(それ以前に自分と彼との間にお世辞を用いてまで親密になる必要性はない)

互いに疑問符を浮かべたまま、相手を観察する。

金色の髪、青い目、色白というのとはまた別の肌の白さ。
彫りの深い顔立ちに妙なアクセントの喋り方。
南蛮人と言うのはやはり自分らと違う世界に生きているのだ。
(身長はたいして変わらないけれど)

「やっぱり異人ともなると、感性も変わってますのね」

――ぶちっ。

口から出た言葉に、何かが切れる音がした。

「KILL!!」
パァンッ
銃声が一発。

そう言えばこの南蛮人、怒ると銃を乱射してくると聞いたことがある。
おかしい、だから何故むこうが怒るのだろう。
重ねて言うが名前をばらされたのはこっちである。

「まったくどいつもこいつも…!この世には目も髪も黒くない人間だっていれば、あなたの名前を変だと思わない人間だっているんデス!」
「だからそれがおかし…」
「基準を押し付けルナーーー!!!」
パンパァンッ
勢いあまってもう銃声がもう二発。
二の句が継げなくなってしまった。
 
「コホン…とにかく、あなたがご自分の名前を私に笑って欲しいというのなら、ソレハ無理な相談です。おかしいと感じないものをどうして笑えまスカ」
さかさかと髪を梳きながら、眼の前の少年はぶつぶつ言っている。 
取り乱したことを多少恥じているようだ。
 
「――どういうつもりですの…?」
「だから私は思ったことを主張しただけデス。それともなんでスカ、あなたたちは他人のことまで自分の思い通りにしないと気が済まないのデスカ!私が何をどう思おうが私の勝手デス!」
ふん、と今度は拗ねられてしまった。
おかしい、この私が、他人のペースに巻き込まれているなんて。

今まで変だという自覚しかなかった名前をさも当たり前のように受け入れられて、柄にもなく戸惑っているのだろうか。
人をあしらうことに関してはかなり長けていると自負しているのに、この少年の前では上手くいかない。
調子が狂ってしまうのは何故だろう。
さっきから、何かがおかしい。

「それよりも…」
「?」
「ここだけの話、私には『ボタン』の方が人名として珍妙に聞こえるんでスガ」
「え?姉上が?」
「知識として『ピオニー(※牡丹の英語)』のことだとは知っていても、音がそのまま私たちの国の言葉でコレですからどうしても…」
言ってちょいと指差したのは上着に付いている金属製の丸いもの。

牡丹、ボタン、釦?

ドビンが普通で、ボタンが妙で、あまつさえ伊賀ずきんがミス・ゴールドになってしまうこの少年の世界。
(ああ本当にわからない!) 

でも――。
ばれた瞬間に笑われるか、怪訝な顔をされるか、そんな反応しかされなくても。
自分だっておかしいと思うし、気に入っているわけではない。
けれど、他人からそれを言われたくはない。

路頭に迷うはずだった幼い自分が今ここにあるのは
この名前を、与えてもらったから。
その事実は変わらないのだ。

だから本当は、この人のように――

「レオさん……私とお友達になりましょう」
「ハ、ハイ?」
「私、姉上よりいい名前だなんて言われたの初めてですわ」
「(別にいいとは言ってませんケド…)」
「あなたのその碧い目で見ている世界は、やはり私のものとは違うのでしょう?」
ぱちぱちと瞬きを繰り返す碧眼。
覗き込んで見れば見るほど、信じられない色をしている。

青――これは、空や海が有していい色だったはず。

わからないのも当たり前だ。
こんな青を通して見た世界が、自分の見ているモノと同じ色をしているはずがない。

「…でも見た目より何より、『あなた』が私にはとても興味深いですわ」

名前も含めて、あなたの眼に私という人間はどう映っている?

問うても仕方のない答えが、無性に欲しくなった。




 
(というか…。顔近…!!)
 
 




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昔ラクガキしたネタの元の文。



寒い寒い寒い…!!!!
木枯らし吹き抜ける寒空の下、業界でも有名な露出度ナンバーワンのザ・くのいちこと甲賀のぼたんは震えていた。
なんせへそ出し、生足、ノースリーブで布の面積より確実に肌の見える部分が多いのだ。
無理もない。
しかし、プライドとかキャラデザとかアイデンティティとか色々事情もあるので嫌とはいえない。
「心頭滅却すれば火もまた涼し!逆!木枯らしも温し!」
だが、精神論を持ち出しても物理的に温度が下がるのはどうしようもない。
本気で肩が冷えて仕方無いのである。
自分で自分を抱く恰好で触ってみたら、外気にさらされた二の腕は氷のように冷えていた。
「あーもう…!!佐助!」
「なんだ」
呼ぶのは「いたんですか」とよくツッコまれる甲賀の佐助。
今回も例にもれず画面の隅っこにいたようだ。
「ちょっとじっとしてて!」
と言うが早いか、ぼたんは中腰になって佐助によりかかる。
「・・・おい」
「で、ここ掴んで」
ちょいちょいと自分の手首を示しながらぼたんは頭と背中を佐助の胸に預ける。
どうやら自分の腕の外側をすっぽりと佐助の腕で包もうという魂胆らしい。
「……」
「はぁー、まあこれで少しはマシだわー下半身は相変わらず寒いけど…」
温い温いとご満悦なぼたんよそに、大人しく言うことを聞く佐助は違う意味で寒かった。
ぼたんの鋭利な髪飾りがちょうどのど元に突きつけられている状態で、
下手に動くと頸動脈あたりをかっ切られそうだ。

「……心頭滅却すれば手裏剣も、か」
「?」
それでも「離れろ」と言わないのは、まあ互いの利害が一致したと言うことで。

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