とてもじゃないが表に置けない痛さ炸裂の雑文をどうにか供養するために設けた墓場のような場所。
※レオにドビンちゃんの名前がばれましたーみたいな。
この二人の接点とか深く考えたら負けです。
私の名前を変だと思わないのかと聞いたら、
眼の前の男は真顔でどこが変なのか説明しろと言ってきた。
説明なんて必要ないだろう。「ドビン」なんて、誰が聞いても普通ではないではないか。
そう言ってみても、眼の前の男は納得しない。
それどころか、不機嫌そうな険しい顔になる始末。
何かがおかしい。本来なら不機嫌になる権利はこちらにあるのに。
黙っていても人ならざるもののように見えるというのに、深く眉をよせてにらみつけてくる。
これぞまさに鬼の形相と言うのだろうか。
「だから、ドビンは土瓶で、お茶を飲むときお湯と茶葉を入れて使うものですわ!」
なぜ知られたくなかった名前を勝手に暴露された挙句、その珍妙さを自らの口で明確にしなくてはならないのか。
いや、口だけではない。この手はそこらの木の枝でご丁寧にカタカナと漢字を書いて説明している。
その隣には簡単な絵までつけてしまっていた。
「…ああ、あれデスカ」
持ちうる手段の限りを尽くし、自分の名がいかにおかしいか相手に納得させることに成功したようだ。
バカらしいことこの上ない。
「ようやくわかっていただけたようで…」
「余計にわかりまセン、Ms.Dobbin, あなたの名前のどこがおかしいというのデスカ」
「はぁ?」
「Dobbinというのは確かにファミリーネームですけれど、れっきとした名前ではないですカ」
「?」
「それに茶道具のひとつなのでショウ?和風で別にいいじゃないでスカ」
……?
この男の思考回路が読めない。
変じゃない?おかしくない?和風だ?
見たところお世辞でもなんでもなさそうだ。
(それ以前に自分と彼との間にお世辞を用いてまで親密になる必要性はない)
互いに疑問符を浮かべたまま、相手を観察する。
金色の髪、青い目、色白というのとはまた別の肌の白さ。
彫りの深い顔立ちに妙なアクセントの喋り方。
南蛮人と言うのはやはり自分らと違う世界に生きているのだ。
(身長はたいして変わらないけれど)
「やっぱり異人ともなると、感性も変わってますのね」
――ぶちっ。
口から出た言葉に、何かが切れる音がした。
「KILL!!」
パァンッ
銃声が一発。
そう言えばこの南蛮人、怒ると銃を乱射してくると聞いたことがある。
おかしい、だから何故むこうが怒るのだろう。
重ねて言うが名前をばらされたのはこっちである。
「まったくどいつもこいつも…!この世には目も髪も黒くない人間だっていれば、あなたの名前を変だと思わない人間だっているんデス!」
「だからそれがおかし…」
「基準を押し付けルナーーー!!!」
パンパァンッ
勢いあまってもう銃声がもう二発。
二の句が継げなくなってしまった。
「コホン…とにかく、あなたがご自分の名前を私に笑って欲しいというのなら、ソレハ無理な相談です。おかしいと感じないものをどうして笑えまスカ」
さかさかと髪を梳きながら、眼の前の少年はぶつぶつ言っている。
取り乱したことを多少恥じているようだ。
「――どういうつもりですの…?」
「だから私は思ったことを主張しただけデス。それともなんでスカ、あなたたちは他人のことまで自分の思い通りにしないと気が済まないのデスカ!私が何をどう思おうが私の勝手デス!」
ふん、と今度は拗ねられてしまった。
おかしい、この私が、他人のペースに巻き込まれているなんて。
今まで変だという自覚しかなかった名前をさも当たり前のように受け入れられて、柄にもなく戸惑っているのだろうか。
人をあしらうことに関してはかなり長けていると自負しているのに、この少年の前では上手くいかない。
調子が狂ってしまうのは何故だろう。
さっきから、何かがおかしい。
「それよりも…」
「?」
「ここだけの話、私には『ボタン』の方が人名として珍妙に聞こえるんでスガ」
「え?姉上が?」
「知識として『ピオニー(※牡丹の英語)』のことだとは知っていても、音がそのまま私たちの国の言葉でコレですからどうしても…」
言ってちょいと指差したのは上着に付いている金属製の丸いもの。
牡丹、ボタン、釦?
ドビンが普通で、ボタンが妙で、あまつさえ伊賀ずきんがミス・ゴールドになってしまうこの少年の世界。
(ああ本当にわからない!)
でも――。
ばれた瞬間に笑われるか、怪訝な顔をされるか、そんな反応しかされなくても。
自分だっておかしいと思うし、気に入っているわけではない。
けれど、他人からそれを言われたくはない。
路頭に迷うはずだった幼い自分が今ここにあるのは
この名前を、与えてもらったから。
その事実は変わらないのだ。
だから本当は、この人のように――
「レオさん……私とお友達になりましょう」
「ハ、ハイ?」
「私、姉上よりいい名前だなんて言われたの初めてですわ」
「(別にいいとは言ってませんケド…)」
「あなたのその碧い目で見ている世界は、やはり私のものとは違うのでしょう?」
ぱちぱちと瞬きを繰り返す碧眼。
覗き込んで見れば見るほど、信じられない色をしている。
青――これは、空や海が有していい色だったはず。
わからないのも当たり前だ。
こんな青を通して見た世界が、自分の見ているモノと同じ色をしているはずがない。
「…でも見た目より何より、『あなた』が私にはとても興味深いですわ」
名前も含めて、あなたの眼に私という人間はどう映っている?
問うても仕方のない答えが、無性に欲しくなった。
(というか…。顔近…!!)
この二人の接点とか深く考えたら負けです。
私の名前を変だと思わないのかと聞いたら、
眼の前の男は真顔でどこが変なのか説明しろと言ってきた。
説明なんて必要ないだろう。「ドビン」なんて、誰が聞いても普通ではないではないか。
そう言ってみても、眼の前の男は納得しない。
それどころか、不機嫌そうな険しい顔になる始末。
何かがおかしい。本来なら不機嫌になる権利はこちらにあるのに。
黙っていても人ならざるもののように見えるというのに、深く眉をよせてにらみつけてくる。
これぞまさに鬼の形相と言うのだろうか。
「だから、ドビンは土瓶で、お茶を飲むときお湯と茶葉を入れて使うものですわ!」
なぜ知られたくなかった名前を勝手に暴露された挙句、その珍妙さを自らの口で明確にしなくてはならないのか。
いや、口だけではない。この手はそこらの木の枝でご丁寧にカタカナと漢字を書いて説明している。
その隣には簡単な絵までつけてしまっていた。
「…ああ、あれデスカ」
持ちうる手段の限りを尽くし、自分の名がいかにおかしいか相手に納得させることに成功したようだ。
バカらしいことこの上ない。
「ようやくわかっていただけたようで…」
「余計にわかりまセン、Ms.Dobbin, あなたの名前のどこがおかしいというのデスカ」
「はぁ?」
「Dobbinというのは確かにファミリーネームですけれど、れっきとした名前ではないですカ」
「?」
「それに茶道具のひとつなのでショウ?和風で別にいいじゃないでスカ」
……?
この男の思考回路が読めない。
変じゃない?おかしくない?和風だ?
見たところお世辞でもなんでもなさそうだ。
(それ以前に自分と彼との間にお世辞を用いてまで親密になる必要性はない)
互いに疑問符を浮かべたまま、相手を観察する。
金色の髪、青い目、色白というのとはまた別の肌の白さ。
彫りの深い顔立ちに妙なアクセントの喋り方。
南蛮人と言うのはやはり自分らと違う世界に生きているのだ。
(身長はたいして変わらないけれど)
「やっぱり異人ともなると、感性も変わってますのね」
――ぶちっ。
口から出た言葉に、何かが切れる音がした。
「KILL!!」
パァンッ
銃声が一発。
そう言えばこの南蛮人、怒ると銃を乱射してくると聞いたことがある。
おかしい、だから何故むこうが怒るのだろう。
重ねて言うが名前をばらされたのはこっちである。
「まったくどいつもこいつも…!この世には目も髪も黒くない人間だっていれば、あなたの名前を変だと思わない人間だっているんデス!」
「だからそれがおかし…」
「基準を押し付けルナーーー!!!」
パンパァンッ
勢いあまってもう銃声がもう二発。
二の句が継げなくなってしまった。
「コホン…とにかく、あなたがご自分の名前を私に笑って欲しいというのなら、ソレハ無理な相談です。おかしいと感じないものをどうして笑えまスカ」
さかさかと髪を梳きながら、眼の前の少年はぶつぶつ言っている。
取り乱したことを多少恥じているようだ。
「――どういうつもりですの…?」
「だから私は思ったことを主張しただけデス。それともなんでスカ、あなたたちは他人のことまで自分の思い通りにしないと気が済まないのデスカ!私が何をどう思おうが私の勝手デス!」
ふん、と今度は拗ねられてしまった。
おかしい、この私が、他人のペースに巻き込まれているなんて。
今まで変だという自覚しかなかった名前をさも当たり前のように受け入れられて、柄にもなく戸惑っているのだろうか。
人をあしらうことに関してはかなり長けていると自負しているのに、この少年の前では上手くいかない。
調子が狂ってしまうのは何故だろう。
さっきから、何かがおかしい。
「それよりも…」
「?」
「ここだけの話、私には『ボタン』の方が人名として珍妙に聞こえるんでスガ」
「え?姉上が?」
「知識として『ピオニー(※牡丹の英語)』のことだとは知っていても、音がそのまま私たちの国の言葉でコレですからどうしても…」
言ってちょいと指差したのは上着に付いている金属製の丸いもの。
牡丹、ボタン、釦?
ドビンが普通で、ボタンが妙で、あまつさえ伊賀ずきんがミス・ゴールドになってしまうこの少年の世界。
(ああ本当にわからない!)
でも――。
ばれた瞬間に笑われるか、怪訝な顔をされるか、そんな反応しかされなくても。
自分だっておかしいと思うし、気に入っているわけではない。
けれど、他人からそれを言われたくはない。
路頭に迷うはずだった幼い自分が今ここにあるのは
この名前を、与えてもらったから。
その事実は変わらないのだ。
だから本当は、この人のように――
「レオさん……私とお友達になりましょう」
「ハ、ハイ?」
「私、姉上よりいい名前だなんて言われたの初めてですわ」
「(別にいいとは言ってませんケド…)」
「あなたのその碧い目で見ている世界は、やはり私のものとは違うのでしょう?」
ぱちぱちと瞬きを繰り返す碧眼。
覗き込んで見れば見るほど、信じられない色をしている。
青――これは、空や海が有していい色だったはず。
わからないのも当たり前だ。
こんな青を通して見た世界が、自分の見ているモノと同じ色をしているはずがない。
「…でも見た目より何より、『あなた』が私にはとても興味深いですわ」
名前も含めて、あなたの眼に私という人間はどう映っている?
問うても仕方のない答えが、無性に欲しくなった。
(というか…。顔近…!!)
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